WAKU
PROJECT NAME

WAKU

 

CATEGORY
FURNITURE
YEAR
2018
OUTLINE
このテーブルは、ラウンジチェア「MAKU(マク)」と合わせて、2018年にミラノ市内のギャラリーで展示されました。このテーブルには、家所亮二のデザイン思想がはっきりと見て取れます。
E Office
ラウンジチェア「MAKU」が、日本の伝統技術に着目しているのに対し、「WAKU」は、水の美しさに着目している。
「WAKU」も、「MAKU」と同様、ネーミングが多義的だ。美しい水がモチーフだから、「WAKU=湧く」。そして、本来、切れ目のないはずの水に、曲線的で印象的な「WAKU=枠」を与えることで、このテーブルの輪郭が成立している。
WAKU
WAKU
WAKU
WAKU
WAKUは、三つでセットになっている。高さはそれぞれ、20、30、40センチ。形状もそれぞれ異なる。これらを、空間の広さや気分によって、自由にずらして使うことで、無数のバリエーションが生まれる。

それにしても、こうした水のような不思議な深みを持つ天板をどうやってつくるのか。具体的に少しだけ説明しよう。天板は、厚さ2ミリのステンレス板。そこに、ウレタン塗料を塗っては混ぜて、流して、エアで吹いて、という作業を何度も繰り返す。すると複雑に入り組んだ表情が生まれてくる。
その上に透明なウレタンで何層もコーティングした。
どれだけ見つめていても理解しきれない、複雑で多様な見え方をする。それが自然環境と似ているのだ。

このテーブルには、家所亮二が設計する際につねに大切にし続けている思想が反映されている。それは、自然の風景から感受した美しさ、感動、衝撃を、より印象的な形に変換して再現するというデザイン哲学だ。それは、自然をありのままに忠実に再現することではない。人間の心の中にある印象を再現していると言った方がよい。例えば、水は、実際には透明なのに、人間の記憶の中には澄んだ青として刻まれている。その印象を更に増幅し物質化して、人々に追体験させる。
WAKU
家所は、「世界中にまだ見たことのない自然の風景があるはず。それをできるかぎりたくさん見てみたい。そして、そこから自然の要素を抽出し、美しくデフォルメして表現してみたい」と語る。
text by salta