NJNG HOUSE
PROJECT NAME

NJNG HOUSE

 

CATEGORY
HOUSE
YEAR
2017
AREA
東京都世田谷区
OUTLINE
東京都世田谷区に建つ住宅です。
屋外リビングを設けた、気持ちの良い空間です。
施主は、ご夫婦と子供3人のファミリーです。
NJNG HOUSE
住宅を設計する際に、家所亮二が最も重視するのは、「性能」だ。
家所が設計する住宅は、インパクトのある外観や個性的なインテリアを持つ場合が多いため、一見すると、意匠性を重視しているように見えるかもしれない。しかし、彼が意匠よりも優先するのは、性能なのだ。
一言で言えば、「長年に渡り、快適に過ごせるか」。性能の追求に向けて、主にプライバシー、光環境、熱環境といった観点から設計を進めていく。
NJNG HOUSE
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この住宅を通して具体的に見てみよう。
まず、プライバシーという側面から、フロア構成が決められた。1階は、バーのようなカウンターやオーディオルーム。つまり、趣味の空間だ。2階は、リビング、キッチン、ダイニング、テラス、和室。テラスは、リビングやダイニングの延長だ。つまり2階は、パブリックな要素を持ったフロア。施主は企業経営者なので、来客も多い。このフロアは重要なのだ。
そして、3階は個室。つまりプライベートな空間。こうしてプライバシーの度合いによって、はっきりフロア分けした。

更に、プライバシーを守るため、外壁には大きな開口部を設けず、外部に対して閉じている。しかし外部からの視線を遮りながら、2階の中庭テラスで外光と通風を確保している。

3階の南西側外壁には開口部を設けた。ここからは光を入れたいので、なるべくダイナミックに大きなガラス開口を設けたいところだろう。しかし西側は、隣家との間隔が広いため、むしろ日当たりが良すぎる。大きなガラス開口を設けると、室内が暑すや寒さの影響を受けすぎるのだ。どんなにサッシの気密性を高めても、開口部の大きさが、室内側の暑さ寒さを決めてしまう。そこで家所は、熱計算のシミュレーションを用いて、開口部の最適な大きさを算出した。 光に関するもう一つのポイントは、西側と南側の周囲から降り注ぐ間接光だ。3階の床がグレーチング(薄い緑色で光を通す樹脂製素材)になっているため、太陽光が2階に柔らかく落ちてくる。
NJNG HOUSE
「光」に加えて、「熱」も建物の性能において重要なポイントだ。家所は設計時に、温暖化や気候変動も住宅にとってのリスクとして考慮している。
2階の中庭テラスには、木製サッシを用いながらも、三層ガラスを用いて、室温が外気温に影響されないよう配慮している。道路側の外壁にはアルミサッシを用い、耐久性を確保している。

こうして、プライバシー、光、熱環境を調節していき、長く快適に住み続けられる住宅性能を追求する。そうすると、住宅の外観はほぼ必然的に導き出されると家所は考える。確保すべき性能の表れが、住宅の外観になるという思想だ。
その結果、この住宅では、グレーでムラのある特殊塗装によって、「ピカピカの新品」ではなく、まるでずっと前からここにあるかのような佇まいとなった。
そうした外観に対して、インテリアというものは、施主がこれまで経験してきた「住経験」の表れである、と家所は考えている。そして、施主の希望の更に少し上をいく空間で応える。今回は、床にオーク材を、天井にはウォールナット材を用いて、温かみある空間を生み出した。住み心地の良さや居住性、そして、飽きのこない長く使える住宅だ。
NJNG HOUSE
text by salta