MOMENT KANDA 南口店
PROJECT NAME

MOMENT KANDA 南口店

MOMENT KANDA SOUTH

CATEGORY
BAR
YEAR
2014.07
AREA
東京都千代田区
OUTLINE
ウイスキー「響」を楽しむためのバーです。
驚きのある大掛かりな「樽」から、味わい深いオブジェや照明器具まで、いろいろな仕掛けが施されています。デザインテーマは、「時間」、そして「ものづくりにかかる手間ひまに思いを馳せること」です。
MOMENT KANDA 南口店
「MOMENT KANDA 南口店」は、サントリーのウイスキー「響」をメインメニューとするボトルバーである。
空間デザイン上の最大の特徴は、何と言っても、酒樽を模した巨大な造作物だ。
飲食店を設計するには、メッセージの伝わりやすさと同時に、驚きとユーモアが重要になる。この店は、その好例と言えよう。
MOMENT KANDA 南口店
MOMENT KANDA 南口店
MOMENT KANDA 南口店
まず、天井が高く面積が広く1階に位置するという立地条件を活かして、街に対して開かれたデザインとなっている。前面道路からよく見える巨大な樽は、インテリアのスケールというよりも、むしろ街のスケールであり、街と店内に連続性を生み出している。
このユーモラスな樽は、道行く人々に驚きを与えると同時に、「ここは、お酒を楽しむための空間である」と人々に理解させるサインの役割も果たしている。また、これらの巨大な樽は、オブジェであると同時に、エントランスアプローチ、個室、トイレといった各種機能を担っている。
MOMENT KANDA 南口店
ひとしきり「樽」を堪能したら、店内でゆっくりウイスキーを飲みながら、この空間デザインの重要なモチーフを楽しもう。それは、「時間」である。
大きな樽をくぐらせることで、客の心を日常から切り離し、ビジネスや街の喧騒とは異なる独自の時間を店内に生み出している。
また、壁に目をやれば、時を刻む照明器具が設置されている。これは、ロックグラスに一定間隔で落ちる水滴が水面に波紋をつくり、それがファイバーライトやミラーによって光に変換される仕組みだ。見ているうちに、日々過ごしている時間への意識が強まっていく。
また、建材にはエイジング仕上げをかけ、いくつもの複層的な時間が店内に流れていることを感じさせる。
壁面の黒皮鉄板の飾り棚には、ウイスキーのボトルがディスプレイされており、琥珀色に発光する。これは、今飲んでいるウイスキーがどれだけの時間と手間を経て生み出されたものであるかを、人々にさり気なく意識させる。こうして感じられる時間の厚みこそが、いっそうウイスキーを美味しくするだろう。
そして、「時間と手間」に意識を向けさせるということは、同時に、「ものづくりの大切さ」を意識させることでもある。
そんなことを感じながらグラスを傾ければ、いつしか「時間」に対する意識がゆっくりと変容し、日常の気ぜわしい時間から解放されているだろう。
MOMENT KANDA 南口店
text by salta