一見すると、シャープにつくられた住宅の階段。向こうが見通せるオシャレなデザイン。
しかし、よく見てほしい。この階段は廊下の幅ぴったりに設置されている。つまり、向こう側へ行けないのだ。おそらくこんな階段も、そしてこんな構成の住宅も、建築史上、初めてではないだろうか。
種明かしをすると、これは、二つの家族が住むことのできる住宅である。しかし、建物の中で互いの世帯の空間を行き来することはできない。この階段を通してのみ、空気や音や視線が行き来できる。SF小説のパラレルワールドのようだ。通常の設計において、空間を仕切る場合、壁やガラスによって物理的に仕切る。けれど、ここでは、そうではなく、新しい距離の取り方を試みていると言える。新しい距離の取り方は、そこに住まう人々に、新しいコミュニケーションの在り方を提供してくれるだろう。